みなさんはじめまして。ご縁あって6月からこちらで勤務させていただいております。
医者になって30年が経ちました。 前半の10数年は大学病院で子宮筋腫や子宮内膜症などの良性の病気をお持ちの方、欲しくてもなかなかお子さんを持てない不妊症の方を中心に診療を行ってきました。その後の20年近くは妊婦さんとお産に関わることが中心で、今まで数え切れない程の妊婦さんに接し、そのお産や手術に立ち会い、その後のお母さんとお子さんの経過をみて参りました。

つくづく感じることがあります。出産はゴールではなく始まりであるということです。
赤ちゃんは子宮の中で、単細胞生物（受精卵）から人間になるまで、30億年の進化の道筋をたどるかのように育っていきます。単純に計算すると妊婦さんの1日は赤ちゃん時間で1千万年に相当するのです。そう考えると赤ちゃんの健康は、基礎が作られている真っ最中の妊娠期間中に、どんなものを食べて、どんな生活をするかにかかってきます。うその情報もまことしやかに流されている情報過多の時代ですから、正しい情報を的確に伝え、そして正しく導いて行けたらと思います。

また赤ちゃんにとって出産時の出来事は（子宮の中にいる時だけではなく）、赤ちゃんの記憶や身体にしっかりと残り、それからの人生に対して計り知れない影響を及ぼします。ですので私たち産科医や助産師は赤ちゃんの一生を左右すると言っても言い過ぎではないくらいの重大な責任を担っていると考えるのです。

赤ちゃんとお母さんにとって何がベストなのかを常に念頭に置き、この世に生まれ出るまでの大切な一日一日、一時一時を妊娠中から出産までしっかりとサポートして、笑顔で赤ちゃんに対面できるように日々の診療に努めたいと思っています。